第42章 追憶のひと
サウザントサニー号は、ハートの海賊団の潜水艦より一回り以上大きい。
コハクに案内されたキッチン兼リビングも、とても広々としたものだった。
「わ、すごい…。」
なんとリビングには、生け簀がある。
生け簀といってもデザインにとても凝っていて、まるで水族館にいるようだ。
まあ、水族館なんて行ったことはないのだけど…。
「お魚を見ながら食事ができるなんて、すっごく贅沢ね。」
キラキラとした瞳を向け、感動しながら呟けば、コハクが自分の船でもないのにドヤ顔になる。
「だろ? これ、全部フランキーが作ったんだぜ。」
「フランキー?」
「麦わらの一味の船大工だよ。ロボみたいでかっけーんだ。」
サクヤのことといい、この船にはまだモモの知らないクルーがいるようだ。
それにしても、こんな芸術品のような船を作れるのはすごい。
「あれ、モモちゅゎーん! 起きたんだ、身体はもういいの?」
しげしげと水槽を眺めていると、キッチンからサンジが出てきて声をかけてきた。
「あ…、ええ。心配かけてごめんなさい。」
「レディを心配するのは当然のことさ。それよりウチの骨ヤローが失礼なことを言って悪かったな。」
骨ヤロー…というのは、恐らくブルックのことだろう。
しかし、失礼なこととは?
幸か不幸か、モモはブルックのあまりの衝撃的な姿に、出会い頭に「パンツを見せてくれ」だなんて言われたことなど、まったく耳に入っていなかった。
はて? と首を傾げるモモをよそに、サンジは続けて呟く。
「いやしかし、あのローがあんな反応を見せるとはなァ。あれじゃまるで、恋する…」
途中で口をつぐみ、「ジェラシー!」と叫び出したサンジにモモもコハクも驚いた。
「え、なに?」
「い、いやいや。なんでもねぇよ。」
あの瞬間、すっかり気を失ってしまったモモには、あの後ローがブルックに切りかからんばかりに激怒し、モモを心配して麦わらの一味を驚かせたことなど、知る由もなかった。