第42章 追憶のひと
そういえば…、とふと思った。
今朝知ったことだが、モモとチョッパーは知り合いだったらしい。
「トニー屋。」
「ん、なんだ?」
「お前、モモとどういう知り合いだ?」
気になって、つい尋ねてしまう。
クルーの過去には干渉しないタチではあるが、モモ相手だとそうはいかない。
チョッパーは気にした様子もなく、「ああ」と頷いた。
「モモとは何年前だったかなー。おれがまだ医者修行中のときに会ったんだ。おれの故郷…ドラム王国っていうんだけど、そこにモモが来てさ。」
「ドラム王国…。」
確か、今の名前はドラム王国ではないはずだ。
数年前に王朝が代わったから。
なぜそんな小国のことを知っているかというと、ローは昔、その国に行ったことがあるからだ。
ほんの寄り道程度ではあるけれど、その島にチョッパーもモモもいたことがあるとは驚きだ。
「なら お前は、モモの昔の仲間を知っているのか。」
モモがドラム王国を訪れたとすれば、それは前の海賊時代だ。
ならばコハクの父親も、一緒にいたはずだろう。
「いや、おれはモモとしか会ってないんだ。海賊には興味があったけど、なかなか人前にいく勇気がなくてさ。」
チョッパーの答えに、がっかりしたような、それでいて安心したような、微妙な気持ちになる。
モモがかつて愛した男を知りたいのか知りたくないのか、自分でもよくわからなかった。
「アイツは昔、白ひげ海賊団にいたっていうから、ドラム王国みたいな小せェ国じゃ、だいぶ目立っただろうな。」
なんとなく想像で呟いてみたが、チョッパーはそれを聞いて首を傾げた。
「ん…? モモは白ひげ海賊団だったのか? おれ、こっそりモモが出航するのを見てたけど、そんなにでっけぇ船じゃなかったぞ。」
「なに…?」
白ひげ海賊団の船は、鯨をモチーフにした巨大船だったはずだが。
いつかモモが話した昔話と、チョッパーが語る話は、微妙に食い違う。
でも、この時はまだ、微妙な違和感を覚えただけだった。