第42章 追憶のひと
メルディアの話だと、エースは“黒ひげ“こと、マーシャル・D・ティーチとの闘いに敗れ、海軍に突き出されたそうだ。
世界一の監獄といわれるインペルダウンに収監され、その後、処刑が執行された。
たくさんのエースを想う仲間が彼を救おうと動いたけれど、あと一歩というところで命を落としてしまった。
その模様は、見せしめのためか全土に生中継されたという。
メルディアはモモとエースが友達だと知っていたため、テレビを見たあと、そのまますっ飛んできてくれたらしい。
この島にはテレビなんてないから。
「エースを救う戦いで、あの四皇“白ひげ”も死んだというから驚きね…。」
白ひげ。
エドワード・ニューゲートのことを、エースは“オヤジ”と呼んで慕っていた。
そんな豪傑まで死んでしまった事実を、モモはどこかぼんやりと聞いていた。
手のひらが痛い。
指の先が白くなるほど強く、握りしめているから。
痛い。
だから、夢じゃない。
嘘だと叫んで、メルディアを詰りたかった。
でも、彼女がモモに嘘を吐かないというのは、誰よりも自分がわかっている。
それになにより、今、目の前にある小瓶。
この中には、エースがくれたビブルカードが入っていた。
入っていた…はずだった。
でも、今は空っぽ。
魔法みたいに消えてしまったビブルカード。
モモは今の今まで、そんな事実にも気がつかないままだった。
どうして…?
エースはいつも、モモを助けてくれた。
それなのに、どうしてわたしは、この命の紙が燃えた瞬間、なにも気がつかないで、ただ呑気に過ごしていたのだろう。
どうして…?
次があるなんて、どうして信じていたのだろう。
この海では、なにがあるかわからないのに。
例えば自分が、愛しいあの人と別れてしまったように…。