第42章 追憶のひと
「ああ、そういえば…お土産はなにを買ってきたの? それもこんなにたくさん。」
ルフィの懸賞金やら食事の支度に追われてすっかり忘れていたが、リビングにはエースが買ってきたお土産の袋がドーンと存在感を放っている。
「んー…、コハクが楽しめそうなもんや、なんとなく気になったもんとか。あんまり覚えてねぇなァ。」
つまり、手当たりしだいに買ってきたということか。
彼の計画性の無さは今に始まったことではないので、今さら嘆くことはない。
しかし、たまにビックリするような品も混じっているので、油断はできないのだ。
変なものが出てきたらエースがいるうちに問いたださなければならないので、モモは大きな包みを開き、品定めを始める。
袋の中身は、コハクのオモチャや絵本。
それからセンスを疑うような置物や、着方もよくわからない民族衣装など様々だった。
そのひとつひとつを手に取り、笑顔で または苦笑してお礼を言い、丁寧にまとめていく。
「あら…?」
その中で目を引いたのは、きちんと梱包された木箱。
何気なく開けてみると、中には美しい花が描かれたカップが入っていた。
「わ、素敵!」
まるで墨をつけた筆で描かれたような独特なタッチに惚れ惚れする。
「ああ、それ。アラバスタの行商人から買ったんだよ。どこの国のもんかはわからねぇけど。」
土産物を買い求めようとアラバスタの市場を歩いていたとき、このカップを見つけた。
しばらく売れていないのか、砂漠の砂を被って薄汚れてはいたけれど、異国情緒を現したようなカップは、絶対にモモが気に入ると思った。
思ったとおりに喜ぶ彼女に、エースは口元を緩める。
「これ、桜の花ね。」
「桜…?」
どうやらモモはカップの絵柄の花を知っているらしい。
聞き慣れないその名前に首を傾げる。
するとモモは自室から古い植物図鑑を引っ張り出してきて、「ほら、これ!」とページを開いて指し示した。