第42章 追憶のひと
「「ただいま!」」
日もようやく傾いてきたというところで、エースとコハクは声を揃えて帰宅した。
また、見事に泥だらけである。
いったいどんな修行をしたのか。
「メシ、できてるか?」
開口一番にそんなことを聞くエースに呆れつつ、「できてるから、先にお風呂へ入ってきて」と2人まとめてさっさと風呂場へ追いやった。
エースが来る日は、夕食が豪勢になる。
客人をもてなすため…というのもあるが、彼が豊富な食材を持ってきてくれるからだ。
特に肉はありがたい。
無人島であるこの島には、当然 食料店などあるはずもなく、すべてが自給自足だ。
時折メルディアがやってきて、調味料や加工品など、どうしても手に入らないものを届けてくれるが、それでもここの生活は優しいものではない。
けれどそれは、モモが自ら選んだ道。
ここにいればセイレーンとして追われることもなく、安心して暮らしていられる。
例え、閉鎖された世界だとしても。
そんな中で、エースはコハクの良い師匠となり、彼に僅かばかりの戦闘技術を教えてくれる。
エースの教えがいいのか、父親譲りの才能なのか、コハクはまだ幼い子供とは思えないほど成長していった。
今では散歩ついでに小さな動物を仕留めてくるほどだ。
普段は2人で使っても大きすぎるテーブルに料理がところせましと並べられた頃、ホカホカと湯気を放ったエースとコハクが風呂から出てきた。
「おッ、うまそー! モモ、また料理の腕を上げたな。」
椅子に座るやいなや、手近な料理をつまみ食いしたエースがモゴモゴと咀嚼しながら笑う。
「エースが持ってきてくれる食材がいいからよ。」
3人が椅子に座ると、賑やかな食卓の出来上がり。
「それでよ、ルフィのヤツ、なかなか頼もしそうな仲間ができてて…」
「母さん、今日のしゅぎょーはな…」
2人同時に違うことを話し始めるものだから、モモは器用にそれぞれに耳を傾けつつ、うんうんと頷いていた。