第42章 追憶のひと
「で、麦わら屋。さっきの質問に答えろ。なぜお前たちがこんなところにいるんだ。」
脱線した話題を元に戻そうと、ローは再びルフィに問う。
「ああ、だってお前ら、いっくら待ってもなかなか帰ってこねぇし、おれたちが迎えに行った方が早ぇと思ってよ。」
そういえば、彼らにはベポのビブルカードを手渡していたのだ。
「先へ進めと言ったはずだが?」
誰も待てなんて頼んでいない。
ましてや迎えになどとはまったく望んでいないのだが。
しかし、ローの苦言など聞くようなルフィではない。
「そんなの知るか! おれはおれのやりたいように進む!」
完全に開き直られ、ローはため息を零した。
まあ、もとより彼らがこちらの言うことなど聞くとは思っていなかったが…。
どちらにしても、早期に再会できたことは喜ぶべきことなのだろう。
(コイツが“麦わらのルフィ”なのか…?)
未だむっつりとした表情を崩さないまま、コハクはルフィを観察する。
実は言うと、コハクはとある事情からルフィの存在は知っていた。
けれど、思い描いていた人物と実際の彼は、ずいぶんと違う。
なぜなら、コハクが見た“麦わらのルフィ”という人物は、頭の麦わら帽子を胸に、静かに黙祷を捧げる男だったから。
そうだ、ルフィに会ったら、まず確認しておかなければならないことがある。
「おい、お前。」
目上の人に掛けるものと思えない呼びかけだが、ルフィは特に気にした様子もなく、「ん?」と振り向いた。
「お前はあの--」
「ヨホホホ、なにやら賑やかになってきましたねぇ!」
大事な質問だったのに、新たに参入してきた声に遮られ、コハクはムッと眉をひそめる。
「景気づけにみなさん、一曲いかがですか?」
なにを言っているんだ。
足取り軽くこちらへ近づいてきた人物を睨もうと振り向いた。
が、その目は驚きに見開かれることとなる。
「うわッ、なんだお前…!」
叫び声にも似たその声は、恥ずかしいことに少し上擦っていた。
けれどそれは仕方がないと思う。
目の前の人物は、それほど奇っ怪な姿をしていたのだから。