第42章 追憶のひと
麦わらの一味が所有する船は、ライオンをモチーフとした海賊船だった。
様々な仕掛けがありそうな船体は、我が海賊船よりも一回り大きい。
まっすぐにこちらに向かってきた船は、徐々に人影を映し出す。
あちらからもモモたちの姿が見えてきたのだろう、船首に腰掛けた人影が大きく手を振った。
「おお~い! トラ男~!!」
溌剌とした、若い男の声だった。
(トラ男…?)
誰のことだろうと首を傾げる。
すると、意外にも隣にいたローが反応した。
「……麦わら屋。」
麦わら屋…、麦わらのルフィか。
声の主の正体を知り、よく目を凝らす。
海から顔をのぞかせた朝日が、彼の姿を鮮明にした。
彼の顔は、よく知っていた。
何度も手配書を眺めたから。
手配書の写真とは思えない、無邪気な笑顔。
ふざけているのか、それともこんな写真しか手に入らなかったのか。
写真からは彼の人柄までを知ることはできなかった。
しかし、初めて目にする麦わらのルフィは、手配写真と変わらぬ笑顔を浮かべている。
(あれが、あの人の…エースの弟。)
ふと脳裏にそばかすが目立つ笑顔が浮かび、モモはキュッと唇を引き結んだ。
(……エース。)
ほどなくして麦わらの一味の船、サウザンドサニー号は潜水艦の真横に停泊した。
「まったく…、なぜ麦わら屋たちがここにいるんだ。オイ、渡り板を架けろ。」
「アイアイサー!」
ローの指示のもと、2つの船の間に橋となる板が架けられた。
「モモ、わかっているとは思うが、アイツらは俺たちと同盟関係にある麦わらの海賊団だ。」
モモの緊張を警戒と受け取ったのか、ローは彼らについて説明した。
「変わった連中だが、まァ…信用はできる。安心はしていい、行くぞ。」
そう言ってサニー号に近づいていくローの後を、モモは一拍置いてからついて行った。