第8章 嫉妬
ようやくモモの居所を突き止め、酒場の扉を開けると、そこには見たことのない服で、肩や胸、脚をさらけ出して眠るモモの姿と。
それを注視する男どもの姿。
「メルディア、これはどういうことだ。」
「どうもこうもないわ。この子、本当にお酒飲めなかったのね。」
悪いことしたわ、と肩を竦める。
「コイツの格好はなんだ。」
「可愛いでしょ? プレゼントしたの。」
「余計なことをすんじゃねェ。」
ツカツカと歩み寄って、モモを抱き上げる。
「強引ね…。聞いたわよ、あなた、モモの恋人じゃないんですってね。」
クスリ、と笑った。
「だからモモに、男を紹介してあげてたの。」
ご覧の通り、と男たちを指し示した。
「メルディア、殺されてェのか。」
「あら、怖い。いいじゃない、彼女、あなたのこと、なんとも思ってないみたいだし。他の男と恋をしようが自由でしょ?」
「ああ、自由だな。…その男が、俺に殺される覚悟があれば、の話だが。」
これ以上の話は無用、とローはモモを連れて酒場を出て行く。
(あれで進展しなければ、もう病気ね。)
どう見たって、モモもローを愛してる。
それに気がつけないのは当人たちだけ。
不器用すぎる恋。
見てて胸がときめいてしまう。
自分とは、なんて違うのだろう…。
私に、あんな恋ができたら…。
メルディアの愛する人は、決して彼女を愛さない。
彼が見ているのは、いつだって--。
「…メルディア。」
愛しい男が自分を呼んだ。
「なぜ、あのまま連れ去らなかった。」
「恋人達に、最後の夜くらい必要でしょう?」
そう言ってメルディアは笑った。
「お前は相変わらず、悪魔のような女だ。」
ごめんね、モモ。
私は絵画より、夢より、愛する人を選んだの。
そのためなら、心も悪魔に売るわ。
私の夢は、叶わない…。