第8章 嫉妬
たまたま島に来ていた有名な評論家の目に留まったのだ。
彼は、母の絵画を絶賛し、大きな街の美術館に展示することを約束してくれた。
母の夢は叶ったのだ。
しかし、運命は母の夢の邪魔をした。
輸送する船が、海賊に襲われたのだ。
母の絵画は財宝とみなされ、船から姿を消した。
あと少し、あと少しだったのに…!
メルディアは絵画を、母の夢を取り戻すことを決めた。
評論家の男は、絵画が揃えば、必ず美術館に展示してくれると約束してくれた。
奪われたなら、奪い返す。
そうしてメルディアは海賊になった。
「…不思議ね。最初は本当に母のためだったのに、いつしか母の夢は、私の夢になってた。」
「いいじゃない、お母さんと同じ夢だなんて…素敵。」
自分の母の夢は、いったいなんだったのだろう。
もう聞くことは出来ないけれど、聞いてみたかった。
「お母さんの絵画、集まったの?」
「ええ、だいたいは手に入れたわ。」
「見てみたい…。」
メルディアの母の、人生の絵。
「いいわ。そのかわり、一杯くらい付き合ってよ。」
ズイッと杯を突き出される。
「え…、わたし、お酒は…。」
「じゃあ、見せてあげない。」
「………。」
今日1日で、モモはメルディアのことがとても好きになっていた。
そんな彼女の夢を見てみたい…。
グビッ
覚悟を決めて、ひと息に煽る。
「あら、飲めるじゃない。……モモ?」
バタン。
「ちょ、モモ、大丈夫?」
「むにゃ…。」
(まさかひと口で倒れるとは…。)
ちょっと可哀想なことをした。
「ふふ、絵画はまた明日になりそうね。」
カランカラン。
酒場の扉が開いた。
「メルディア、これはどういうことだ。」
目を向けると、鬼のような形相でこちらを睨むローの姿があった。