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セイレーンの歌【ONE PIECE】

第42章 追憶のひと




ふと、先ほどまであんなに寒かったのに、今はずっと暖かいことに気がついた。

きっと、みんながいるから。

そう思ったら、心がポカポカしてきた。

「ねえ、ロー。わたし、今夜 見張り番ができて良かったわ。」

隣に立つローに微笑みかけると、彼は意外そうな顔をした。

「なんでそんな感想になる? 寒ィし、おもしれェことなんざ なにもねェだろ。」

確かに寒かったし、やることがなくて退屈だった。

でも、見張りの辛さがよくわかった。
それになにより…。

「みんなの暖かさが、すごくよくわかったもの。」

火鉢も毛布も、ひとりひとりの気遣いが。

こんなにみんなに想ってもらえて、自分はなんて幸せ者なのか。

今は心からそう思える。


それなのに、どうして今朝あんなにムキになってしまったのだろう。

いや、理由はわかっている。
きっと夢見が悪かったからだ。

目を閉じれば今でも、昨夜の夢が鮮明に思い出される。

(…ううん、夢じゃない。)

あれは、モモが唯一、心から後悔をした記憶だった。

もし戻れるのなら、もう一度、あの瞬間に…。

そう思って目を閉じるけど、例えあの瞬間に戻ったとしても、モモになにができるわけではないことも わかっていた。


「…あ、朝日だ。」

呟かれた言葉に瞼を開き、海平線へと目を向けると、夜明けと共に朝日が顔を出しつつあった。

いつの間にか長い夜は終わりを告げていたらしい。
結局、みんな一睡もすることはなかった。

「もう今さら寝るのもなんだなー。」

「今さらっていうか、お前は日中に昼寝ばっかしてたじゃねぇかよ、ベポ。…っていうか、腹へったな~。」

やれやれとため息を吐いたシャチのお腹がぐぅ…と鳴った。

「じゃあ、このまま朝食にしましょうか。」

いつもの食事時間にはだいぶ早いが、デッキには「賛成~!」と挙手が上がった。

ハートの海賊団の朝は、今日も早い。



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