第42章 追憶のひと
「おーい、モモ! 寒いだろ、ちょっと休憩しようぜ!」
呼び声に驚いて目を向けると、デッキには湯気の出るカップを持ったシャチの姿が。
「シャチ?」
ジャンバールに続いての来訪者に、思わず目をぱちくりとさせてしまう。
しかし、来訪者はシャチだけではなく…。
ガチャリ。
「モモ~、おれ ヒマになったから、一緒に見張りしよう!」
ドアを開けてデッキに出てきたのは、もふもふの身体が暖かそうなベポ。
デッキに出ていたシャチと顔を合わせるなり、「どうしてお前が!?」と驚いている。
さらに続いてドアが開き、顔を覗かせたのはペンギン。
「モモ、ちょっと早いけど、見張りを交代しよう…って、なんでみんないるんスか!?」
ちょっとどころか交代には数時間早い。
そんなペンギンもデッキの状況に目を見開いた。
けれど、1番驚いたのはモモ自身である。
「みんな、どうして…。」
呆然と呟いた時、最後のドアが開く音が鳴った。
「あーあ、こうなると思ってた。」
ため息混じりに船内から出てきたのはコハクとヒスイ。
集まったメンバーを見るなり、やれやれと大げさな仕草をとった。
「どうしたの、みんなして…。」
こんな夜更けに一味大集合となり、びっくりしてモモもローもジャンバールもデッキへ降りた。
「あ、キャプテン! ジャンバール! 見ないと思ったら2人してモモのところにいたのか。」
2人の姿を発見したベポは、「抜け駆けはズルイぞ」と言って、ジャンバールにだけチョップをする。
結局全員、モモのことが気になって仕方がないようだった。
「ほら、だから言っただろ。母さんには見張りは無理だって。」
諭されるようにコハクに言われ、モモはなるほど…と頷いた。
モモが見張り番をすると、誰も眠ってはくれない。
でもその理由は、頼りないからでなく、みんなの愛情だった。