第3章 第3話
部屋に着いてすぐに、先日のお礼の文面を書いて送った。九時は過ぎていたけれど、朝早いのよりはマシだと思い、急いで送った。そのまま先にお風呂を済ませてから携帯電話をチェックすると、早くも返信が来ていた。
『ご丁寧にありがとうございます。結衣さんは礼儀正しい方ですね。
ところで、次の日曜日に何かご予定はありますか?』
またもドキリとした。男性からのお誘いにそれほど慣れていない私は、こういう時にどう反応して良いのやら困る。この辺り、渚とかならうまくやっていたんだろうけど。以前に渚から、「そんなんだからアンタはいつまでたっても誰とも進展しないのよー!?」なんて言われたのをふと思い出した。そりゃあ、渚みたいに明るくて可愛くて積極的な女性なら、少しは自信も出てくるだろうし、男の人だって声も掛けやすいんだろうけど、私はお世辞にも容姿端麗なんて言えないし、積極的とは言えない性格。ごく稀に合コンに誘われても、確実に数合わせだ。というか、女子は自分よりも絶対に可愛い(と、異性から認識されるような)相手は最初から誘わないわけだし。なんか、こんなこと考えてたら、気分が沈んできた。しかし、こちらの勝手な気分の浮き沈みを理由にしてメールに返信しないのも悪いので、短く返信を返す。予定も無いので正直に答えてみよう。この間みたいに、歴史の話なんかを面白おかしく聞ければ、一人で過ごすよりも楽しいだろうし。
『返信ありがとうございます。特に予定はありませんよ。』
恋人のいない独身女性の休日の過ごし方なんて、寂しいものだ。実家から呼び出されたとき以外の過ごし方なんて、家でのんびり(ダラダラ)と過ごすか、近所に買い物に行くか、誘われたときに友達と出かけるかぐらいだと思う。特に家で過ごしている時なんて、目も当てられないぐらいの緩みっぷりだと思う。そんなことを考えていたら、思いの外、早く返信が来てしまった。
『では、映画などはいかがでしょうか?今上映している、「荊姫の騎士」を観に行きたいのですが、私一人では行き辛くて、困っているのです。』