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ハコの中の猫 【黒執事R18】

第7章 extra


「いいえ、坊ちゃん。無意味で不要ではありますが、だからこそ、なのです。」
「だからこそ?」
 相変わらず、言っている意味まで分かりづらい。
「我々悪魔にとって、人間は食材。坊ちゃんは料理などしたことがないですから、分かりにくいかもしれませんが――――――」
 また僕を小馬鹿にしたような物言い。いい加減にしろ。
「食材は、時間を掛けて調理すればするほど、その味わいが深まるのです。悪魔の時間は、それこそ無限。その時間を、素材を輝かせるために使うのです。」
「金も掛けてか?」
「坊ちゃんもご存知でしょう。悪魔にとって、この世の貨幣などガラクタ。」
 うっすらと笑みをたたえた悪魔の目元には、冷たい光が宿っていた。
「ガラクタを使って、可愛らしい猫の箱庭を作るのです。そしてそのハコの中で、手間暇を掛けてその猫をしっかりと調理するのです。最期の瞬間、最も芳醇な味わいになるように―――――」
 悪魔は、その瞳に愉悦を滲ませた。
「悪趣味だな。」
「私はあくまで、悪魔ですから。それに、それは坊ちゃんも同じでしょう?」
 セバスチャンは、楽しそうに口元を歪めた。
「シュレーディンガーも真っ青だな。」
 もうコイツに反論しても無駄だ。何を言っても同じことだ。僕は諦めて、窓から見える月を眺めた。今宵は満月だ。人間であった頃は、その存在に何の感慨を抱くこともなく、その存在すらも気に留めていなかったが。



「では坊ちゃん、次はどこへ行きましょう?」
 その言葉と共に差し出された手は大きく、透き通るように白かった。
「……どこだっていい。」



 この部屋は、このまま捨て置かれるのだろう。
そして、ハコの中で何が起こったのかは、永遠に分からないままだ。

それを知る「人間」は、もういないのだから。










~ハコの中の猫extra~ Fin.


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