第2章 第2話
「別に、そんなに仲が良いわけじゃなかったし、職場で同期なだけだったんですけど。なんかこう。やっぱり、……すみません、上手く言えないです。それに、よく考えたら、こんなところで初対面のセバスチャンさんにお話しするようなことでも無いですよね!すみません、忘れてください。」
「いえ。それに、そういったことは口に出してしまった方が、気が楽になることもありますよ。」
「そ、そうですか。それじゃあ。……それに、何か、私も詳しい話は全然知らないんですけど、ちょっと妙な亡くなり方をしたらしくて。」
紅茶色の双眼は、動かない。
「ホテルで、変死したらしくて。争った跡も無いし、お金も盗られてない、薬品とかも出てこなかったとか。しかも、警察の人たちによれば、最後に会った人が、……私なの。先に帰ってって言われたっきり。今さっきね、久しぶりに会ってきたんですけど……」
私は、次の言葉が見つからず、俯く。涙が溢れ出るような激しい悲しみは覚えられないが、なんとも表現し難い無力感や寂しさが私にじわじわと迫るような、そんな感じ。
「ご注文の、ローズマリーティーとダージリンティーでございます。ごゆっくりどうぞ。」
店員さんが、お茶を持ってきてくれた。小さく可愛らしいクッキーも、繊細な薄いプレートに乗せられてやってきた。
「冷めないうちに、どうぞ。」
セバスチャンさんは、その低く甘い声で、静かに囁くように勧めてくれた。綺麗な装飾のカップを手に取り、顔を近づける。以前に職場でティーバックに入ったローズマリティーを飲んだのをふと思い出したが、比べることすら恥ずかしいぐらいの良い匂いがした。少し口に含めば、ハーブの香りが体いっぱいに広がった。代わりに静かに息を吐けば、私の感情が少し抜けたような気がした。