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ハコの中の猫 【黒執事R18】

第2章 第2話


「どうでしょう。ご一緒していただけますか?」
 ドラマに出てくる紳士のような優雅さを含んだ口調が、私の耳に心地よく響く。でも、何なのだろう、どこか寂しいような響きのようにも聞こえてしまう。
「……はい。じゃあ、ミカエリスさんさえよろしければ、お言葉に甘えさせてください。」
「セバスチャンで構いませんよ。姓で呼ばれることはほとんどありませんから。」
 セバスチャン・ミカエリスさんはこう言ってはいるが、私は男性をファーストネームで呼ぶことの方がほとんどない。職場では苗字だし、知り合いでもせいぜいあだ名だ。いや、でも、外国ならそんな文化だとか、学生時代に小耳にはさんだ気もする。
「私も、佐藤さんのことは、結衣さんと呼ばせていただきますから。構いませんか?」
「か、構いませんよ。えっと、セバスチャン、さん?」
男性にファーストネームを呼ばれるなんて、なんだかくすぐったい気もする。
そうこう言っているうちに、車はコンビニの角を曲がらず、少し細い道に入っていく。思ったより早くカフェに着いた。自分で助手席のドアを開けて建物までダッシュしようと気合を入れた瞬間、見透かされたように「そのまま乗っていてくださいね」と言われ、傘を持ったセバスチャンさんに外からドアを開けられた。別に、そこまでされるだけの理由が無いだけに、正直言って申し訳なさの方が勝る。

「へぇ~、近所にこんな雰囲気のカフェがあったんですね。」
 カフェは木造の二階建てで、温かみのある落ち着いた雰囲気が漂う建物だった。店の回りはお洒落な木や小さな花を咲かせる鉢植えの花などがバランスよくレイアウトされており、ゆったりとした時間が過ごせそうな印象だ。二階部分の一部はテラスになっており、天気の良い日はそこでお茶も飲めるようになっているようだ。入ってみると店内も静かで、学生らしき男の子が一人読書に耽っているのが見えたり、老夫婦が囁き合うように何かを話しているのが聞こえたりした。店員さんに案内され、席に着く。

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