第2章 出陣の日
「安定…!!!」
こちらを振り返ることなく走る安定。
私はというと手を放して貰えず同じ速さで走ったせいか息が切れていた。
「急にどうしたの?」
いつの間にか私の部屋の前まで来ていて、安定が静かに中に入る。
「………。」
明かりを灯していないので、月明りだけが私たちを照らす。
少し顔が見えにくいが私を座らせると、少し距離をとって向かいに座った。
「ねえ、本当にどうしたの?何かあった?」
真っ直ぐにこちらを向いて口を開かない安定。
その表情から感情を読み取ることは出来ない。
「主さ……」
少し口を開きにくそうな微妙な顔をする。
今から何か言うのだろうと、私はあえて口を開かないで待っている。
「あの…主……」
何回か口を開いて閉じてを繰り替えしたが、やっと決心がついたのか安定の目が私の目を捉える。
「……何を見てきたの?」