第2章 出陣の日
「…く………で…」
浮遊感を感じるままに暗闇をさまよっていると、いつの間にか和風造りの建物が見えてきた。
本丸かと思ったが、そうではないようで―……
「…くん………いで…」
さっきから途切れ途切れに聞こえる声。
とても悲しそうで、何かを耐えるようなこの声に聞き覚えがあった。
「…安定?」
ぼんやりと見えるその姿に声をかけたが、当の本人には聞こえていないようだ。
「…沖田君…」
沖田…?
体が少し地に落ちた感じがし、そのまま安定に近づくとすぐ傍には真っ青な死人のような顔をした男の人が横たわっていた。
俯いたまま呟く安定に手を伸ばしてみたが、透けて触ることは出来なかった。
「……!!」
最初の暗闇と浮遊感、そして全く届かない声-……
触れる事ができないのも、すべて思い出した。
「もしかして、安定が切った敵の中に前にも切った人が……」