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あなたの好きをまだ知らない。

第3章 陽炎2


美乃里ちゃんの弾いたボールが私目掛けて飛んでくる。

「美寿子ちゃん!!」

正直に言って、怖い。
あの時の記憶が蘇る。
でも、冴杜だって、多分本当は辛かったはずなんだ。

「だから、私も!!」

飛んできたボールが手に触れる頃には美乃里ちゃん達のいたセンターラインは抜いていた。

「えっ!?早っ!!」

残りの4人も軽くあしらい、
ドフリーになった私は、ゴールより少し手前で飛んだ。

「外れるわ!リバウンド!!」

相手の誰かがそう言った。
でも、伊達に小学校からバスケをやっていた訳じゃない。

「外れるわけ無いじゃん!!」

そう言って男子も驚くであろうダンクシュートを決めた。
瞬間、体育館は静まり返って大いに沸いた。

「2mは跳んだよね!!」

「いや、むしろあれは飛んだでしょ(笑)」

そんな最中、私は自陣まで戻った。

「美寿子ちゃん!!すごいよ!」
「えっ、ありがと…」

とても楽しい感じがした。
だが、同時にあの時の嫌な記憶がまた頭を埋め尽くした。
いつの間にか、美乃里ちゃんと二人でトリプルスコアまで持ち込み圧勝していた

「美寿子ちゃん!すごいよ!!」
「ホントだよ!これなら優勝も夢じゃないよ!!」

皆がそう言ってくれるのは、素直に嬉しかった。
と、美乃里ちゃんが肩を叩いてこう言ってきた。

「何が嫌でバスケ辞めたのかは分かんないけど、私は美寿子ちゃんと、みんなとするバスケは好きだよ。」

「美乃里ちゃん…」

「だって、私達めっちゃプレイスタイル似てるじゃん!?」

「はぁ、ホントに美乃里はバスケバカだよね。」

「ホント、笑っちゃう。」

私が閉ざしていた道が、こんなにも華やかに見えるのは、どうしてだろう。

「ねぇ、美寿子ちゃん!」

「えっ?」

「絶対優勝、しようね!!」

差し出されたその右手に、
私は少し涙が出た。

「うん…ありがと…」

そのまま、私達、2年3組の女子バスケの快進撃は続き、結局、全試合トリプルスコアで優勝した。

もちろん、体育館に冴杜がいることも、分かっていた。
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