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あなたの好きをまだ知らない。

第3章 陽炎2


私は、冴杜のサッカーが終わってからおめでとうを言いに行った。

「優勝おめでとう!カッコよかったよ!」

「あ、ありがとう…美寿子はこれからバスケだろ?」

「うん。疲れてたら、来なくても良いからね?」

「いや、行くわ。丁度ツレも出来たしな。」

そう言って冴杜は横の丸山くんを指差している。

「そっか、嬉しいよ。じゃあまた後でね!!」

そう言って体育館に入った。
なんだかすごい空気が重かった。

「美寿子ちゃん!バスケだったよね?」

「あ…うん。」

この子は指塚美乃里ちゃん。
私と違って凄く活発で現バスケ部。

「美寿子ちゃんって部長だったんでしょ?どうして高校でやらなかったの?」

「えっと…いろいろ…あってね…」

本当は違う。
ただ単に人が嫌いで、関わりたくなかっただけ。
それに、もうこんなに嫌な思いをしたくなかった。

「…美寿子ちゃん?」

「えっ!?な、何でもないよ!アハハ…」

多分バレバレだと思う。

私の過去は、あまりにも思い出すには辛くて、閉じ込めるしかなかった。
でも、それをしても私の過去は“今の私”を変えてしまっていた。


だが、そんなことは露知らないタイマーがいつの間にか鳴り響き、コートに足を踏み入れた。

「んじゃ、前話した通り、出来るだけあたしと美寿子ちゃんにパス回して、プレス早めにね。」

「…ボール触るの…久しぶりだなぁ…」

懐かしくもあり、痛くもある記憶だ。

「じゃあ、ボールはあたしがやるわ。」

そう言って美乃里ちゃんはコートの中心に向かった。
制限時間は正規と違って10分を2回だけ。

「一気に決めなくちゃ…」

自分でも目付きが変わった気がした。
そして、ボールが宙に投げられた。


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