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あなたの好きをまだ知らない。

第2章 陽炎


「柊君、大丈夫か?」

「あ、あぁ…大丈夫、後半はやるから。」

体が悲鳴を挙げている訳じゃない。
足が動かない訳じゃない。
ただ単に、心が痛くて仕方がなかった。

「冴杜、頑張って。」

向かい側のベンチにいる美寿子がそう口を動かしていた。

「そうだな、くよくよしてられねぇもんな。」

俺は立ち上がった。
過去を忘れる為じゃなく、今、大切な人の為に。

そして、後半が始まる。
2対1、後1点とれば流れはこっちの物だ。

前を見ると丸山へのパスコースが空いていた。

だが、相手のディフェンスラインは高い。
サッカーは支え合うスポーツだ。
だから今俺が一人で切り込んでも大丈夫な訳だ。

1人、2人、3人と抜いて後はゴールキーパーのみ。
だが、体制が崩れシュートコースは限りなく少ない状況で、
横に丸山の姿が映った。

「やっぱり俺は噛ませ犬さ。」
そう小さな声で言って丸山にパスをした。
案の定、ボールはゴールネットを揺らした。

「ナイスシュート、丸山。」

「一弥で良いよ。それに、俺の方が噛ませ犬さ。」

「聞こえてたのか。」

なんか、こうゆうのは久し振りで、胸が熱くなった。
それからは俺と丸山のツイントップで5点まで点を伸ばし、圧勝した。
総合順位も1位まで登り詰めた。

「後は女子のバスケとバレーだな。」

「女子は強いから、大丈夫だよ。」

それは今時の女は強いという論理か?
と聞きたかったが、生憎、俺にはそんな勇気はなかった。

「冴杜、バスケ、見に行くんだろ?」

「あぁ…何でだ?」

「良ければさ…一緒にどうかな?
お前といると楽しいしさ。」

「…まぁ、構わないけど…」

そうして、俺は心を許しつつあった。
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