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あなたの好きをまだ知らない。

第2章 陽炎



「い…け…冴杜!」

美寿子が精一杯そう叫んでいるのが聞こえた。
いや、きこえてはいないが、確かにそう言っていた。

そして、俺はゴールへの白いテープを切った。

「おぉっとぉ!!なんと!!初日の目玉競技を優勝したのは2年3組ぃ!!」

走り終わると、視界が眩み、倒れかけた。
が、何かに支えられている事が分かった。

「お疲れ、冴杜。」

「美寿子も…がんばった…な…」

息も絶え絶えとはこの事だ。

結果、俺達のクラスは全体2位。
担任の橋塚もとても誉めちぎっていた。
だが、まだ初日。
西光高校の体育祭はここからが本当の勝負である。

片付けが終わると、
俺は即保健室に体調不良を理由に転がり込んだ。

「じゃあ先生会議あるから、気分良くなったら勝手に帰って良いからね。」

「はい…」

まだ動機が落ち着かない。
手足も軽く痺れる。

「冴杜、大丈夫?」

「まぁ大丈夫、美寿子は疲れてないのか?」

「私は、大丈夫だよ。
体力だけがとりえだからさ。」
そう言って少し笑う。
この笑顔に俺は少し戸惑う。
結局、一人で来れなかったから、美寿子に手伝って貰ったのだ。

「帰ってもいいんだぜ?」

「良いわ、ここにいる。
心配だもの、」

「お前、人と関わりたくないって、言ってたじゃねぇか。」

「それでも、冴杜は私の事誰よりも分かってくれてるから。
だから、信じたいんだ。」

赤面しながら美寿子はそう言った。

「俺も…美寿子の事…信じたい。」

そう言って勇気を振り絞り手を繋いだ。

「ありがと、嬉しいよ。」

美寿子は笑いながら涙を流していた。
俺はそんな美寿子が好きなんだと、今気付かされた。


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