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あなたの好きをまだ知らない。

第7章 秋桜


夏休みが明けて、少しした。
気だるい学校生活がまた始まる。
だが、9月といえば文化祭シーズンだ。
西光高校もまた、その文化祭の準備真っ盛りだった。

「ほら、顔動かさないで。」

「はぁ…ちょっと、俺は男なんだからね?」

「分かってるけど、そのまんまの顔のお化けなんていないでしょ?」

「まぁ…」

そう、俺達のクラスはお化け屋敷をやることになった。
そして、お化け役のやつらは、化粧をすることになったのだが…

「はい、後は傷のメイクだけね。」

「まだするのか…」

.......

化粧が出来上がると
俺はどっかのビジュアル系アーティストみたいになっていた。

「…ホントに冴杜?」

「美寿子がやったんだろうが。」

「えーでも何時もと違ってカッコいいかも…」

不本意だったが、少し嬉しかった。

「あ、ありがとな…」

「ほら二人とも!!イチャイチャしてないで早く道具のチェックしてよ!!」

「あ、ごめん美乃里ちゃん!」

一番忙しい時期に俺は酷い役を受け持ったものだ。
これからはこのメイクを一人でやらなくてはいけないらしい。

「美寿子にやり方聞くか…」

.......

文化祭当日になると、学校は急に賑やかになって、いよいよ文化祭が始まる気配が漂っていた。

「しっかし…ホントにメイク落とし効くんだろうな?」

「大丈夫だってば。
普段は使わないけど、すぐに落ちるんだから。」

美寿子に促され、俺は暗い教室に佇んでいた。
来る人を見つめるだけで悲鳴をあげて逃げていた。

「お疲れ、喉乾いたでしょ?」

「あぁ、ありがとう。」

美寿子は係りでもないのに俺が出てるときはずっと受付をやっていた。

「指塚と見てきたって良いんだぞ?」

「ううん、文化祭は冴杜と回ろうって決めたから。」

暗い中というのもあるが、美寿子の笑顔がとても幻想的で一瞬で顔が赤くなった。

「そ、そっか…もう少しで終わるから…」

「うん!待ってる!」

そう言って美寿子は表に出ていった。

「…まだ残暑が暑いな…」

俺はこの暑さを残暑のせいにした。
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