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あなたの好きをまだ知らない。

第7章 秋桜


西光祭が終わると生徒だけね後夜祭が始まる。
先生達も余興として何か劇をやるらしい。

「冴杜ーキャンプファイヤー行こーよー」

「構わないけど、他の舞台は良いのか?」

「憧れだったんだよねー!
二人でキャンプファイヤー見るの。」

キャンプファイヤーでは音楽に合わせて皆で炎を囲みながら踊るのが伝統らしい。
が、去年は文化祭が終わるとすぐに帰っていた。

「冴杜!早く行かなきゃ火ついちゃうよ。」

美寿子に手を引かれて校庭に出た。
炎が燃え上がると皆が盛り上がり始め、美寿子の手が強く握りしめられたのが分かった。

「綺麗だね…」

「あぁ…去年は見なかったから、初めてだよ。」

「私も去年は文化祭自体休んだから…今年は楽しいよ。」

寂しそうな顔はしてなかった。

「人多いね。」

「違うとこ行くか?」

美寿子が小さく頷いて俺は美寿子の手を引いていつもご飯を食べてる体育館裏に来た。

「ここ、案外夜来ると怖いね。」

「何か出てきそうだな。」

「冴杜みたいなお化けなら大丈夫だよ。」

そう言って美寿子はいつもの小さなベンチに座った。
ようやく暗闇に目が慣れてきて、周りの景色が分かるようになった。

「見ろよ、星が見える。」

「ホントだ…綺麗ね…」

ベンチで手を繋ぎ合う。
何だか凄く胸が苦しくなってきて、心臓が高鳴る。

「冴杜はさ、進路とかもう考えてる?」

「…いや、一応大学に行こうかな…なんて…美寿子は?」

「私はしっかり大学行こうかて思ってる。」

美寿子は何だかんだしっかりしてるから、きっと大学だって受かるはずだ。

実際、進路なんて自分の好きな事を極める為に各々の進学先に行くのだから、自分のやりたいことを見つけるのが一番良い。

「俺は…美容師にでもなりたいな…」

「冴杜、かっこいいじゃん。
似合うと思うよ。」

美寿子のその笑顔が夜月に照らされて、いつもより、キュンとした。

「なぁ、キスしても…いいか?」

「良いに決まってるでしょ?
ずっと…待ってたんだから。」

そういわれてそっと頬を持ち上げ、その唇にキスをして、抱き締めた。

微かなおぼろ月に秋が来たのを感じた。
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