第5章 夏草
「父さん達が謝って何の贖罪になる。」
「…あー…あんた達はホントにクズ共だ…何しに来たんだ。
もう消えてくれ…あんた達がいなくても生きていけるんだよ…」
「そうか…なら良かった。」
その言葉に俺は変な違和感を感じた。
「お前の産んだ母さん…早恵が死んだ時、何て言ったか知ってるか?」
「…知るかよ…」
「あいつは…お前を甘やかすなって言ってた。
お前は一人で戦える人間だから、最低限の補助だけすれば強く生きていける奴だって…死にそうな息のなか、そう言って泣いてた。」
体が震えた。
その言葉を直接母さんに言われたみたいだった。
「…だから、俺達は別の所に行くよ。お前は早恵の子だ。
俺たちを憎むその信念を絶対に曲げないで生きろ。」
そう言って二人は立ち上がり、家具と金を置いて出ていった。
「…なんだ…これ…」
金の封筒の中に何かmicroSDが入っていた。
「2000、08、25…2000年、8月25日か。」
それを読むとテレビの差し込み口に差し込んだ。
『…冴杜。誕生日おめでとう。と言っても、こっちの今日は27日だけど。』
そこには忘れない、本当の母さんがいた。
『今あなたは何をしてるでしょうね。きっと、サッカーも上手くなってプロになってたりするのかな。』
「母さん…」
『きっと、あなたなら一人で強く生きられるわ。
私はあなたの事を本当に愛してたわ。』
「なぁ、母さん…」
『だから…幸せに…生きるのよ
かわいい彼女を作って、絶対に浮気しないこと。
じゃあ…これでさよならね。
お母さんは、ずっとあなたの事を見守ってるから。
約束よ。』
そこで映像は途切れた。
「何で…そんな悲しい顔するんだよ…」