第1章 鳥籠
HR、
担任の橋塚の話も終わり
自己紹介になった。
新学年ではよくある話だ。
だが、俺は彼女の事を気にしていた。
『あなた、柊君?』
『はい、あの~あなたは…』
『私は皐月美寿子です。
あなたと同じ西光高校の一年生になるの。宜しくね?』
『は、はい…』
『ふふふ、あなた面白いわね。いつか、お友だちになりましょ?』
入学前のある日に話しかけられ、とても記憶に残っていた。
「皐月美寿子です。好きな事は読書です。」
だが、今の彼女と前の彼女はまるで別人のように静かだった。
関わるのは嫌だが、彼女の真意を聞きたかった。
「おーし、じゃあ自己紹介も終わったし、先生からも何もないから、今日はこれで解散!」
クラスから吐き出されるように生徒達が出ていく。
さて、俺も…
と、鞄を持つと、俺の視界に人影が出来ていた。
「あ…皐月…」
「久しぶりね、柊君。
覚えてくれてて良かった。」
彼女の方から話しかけてくれた。
俺としては、早く帰りたかったが、聞きたい話もある。
「ここじゃ先生とか来るから、場所を変えようか。」
彼女はあっさり了承し、近くの喫茶店に入った。
有名なブランド店だが、
平日の昼前だからか、空いていた。
「まずは、何から話せば良いかな?」
「…じゃあ、何であの時、俺に話しかけたんだ。」
可笑しな質問だ。
そんなのそこに同じ学生服を着ている奴がいたからだろうに。
「それはね…私、人見知りで、それに余り人の事好きじゃなくて、でも、変わらなくちゃって、そう思って…」
同じだと思った。
彼女は俺と同じ心の持ち主いや、それ以上だと僕は悟った。
「俺も…人を信頼できないんだ。
それは多分これからも続くんだと思う。」
「うん、私も…そうだと思う。」
だから。
「俺は、皐月なら、信じられると思うんだ。
だからさ、これからも仲良くしてくれるか?」
「もちろん。宜しくね柊君。」
「冴杜でいいよ。」
「じゃあ、冴杜。私も美寿子でいいよ。」
「分かった、美寿子。」
何だかとても胸が温かくなった。
だけど、まだ彼女の秘密を知るのは先の話だった。