第4章 夏晴
「なぁ、美寿子、風呂借りて良いか?」
「え?良いけど…あっお湯溜めなきゃ…」
「いや、シャワーで良いよ。」
「そ、そう…なら、リビング出て左の扉ね。」
ありがとうと言って、俺はシャワーを浴び始めた。
髪を洗いながら、ワックスが落ちていく感触を手で感じる。
良く考えてみれば、自分の過去を話したのは初めてで、少し新鮮な感じがしていた。
「冴杜、タオル、置いとくね?」
「あぁ、サンキュー。」
「…私、冴杜と付き合ってホントに良かったって思うの。」
シャンプーを流しきると、美寿子がそう言った。
「まだ半日も経ってないけど、冴杜といるだけで、自然と笑顔になれるし、安心できるから。」
「…そっか…でもな、俺はそんなに強い男じゃないんだ。
傷付きやすい人間なんだよ、
自分で言うのもなんだけど。」
「その痛みを知ってるから、その分冴杜は優しいんだよ。
」
「…ありがと…俺も…美寿子と付き合えて、良かったよ。」
「も、もう!!早く上がらないとのぼせちゃうよ!!」
「分かったよ。」
しばらくして風呂から上がると寝室らしき部屋に電気がついていた。
「美寿子…いるのか?」
そっと扉を開くと、美寿子はベッドで眠っていた。
「すぅ…すぅ…」
「…寝てるのか…」
何もかけずに寝ていた美寿子にそっと掛布団を掛けてあげる。
「んぅ…さえ、と?」
「お前、よだれ垂れてるぞ。」
「え?…」
まだ意識がはっきりしないのか、寝ぼけながら顔を触る。
「ったく…ほら。」
口の横のよだれを拭き取る。
そうすると美寿子はすぐに意識がはっきりしてきたようで…
「さ、冴杜?…な、何したの?」
「何って、よだれを拭いただけだよ。」
「なんだ…びっくりしたなぁ…」
びっくりしただけなのか。
「私もお風呂入ってきて良いかな?」
「美寿子の家なんだから、俺に聞くなよ。」
何だか挙動がおかしいのは気にしないで、さっきまで美寿子が横になっていた跡を手で撫でる。そこから男とは別の良い香りが漂っていた。
「あいつ…良い香りだ…」
「冴杜?何言ってんの?」
「美寿子!?風呂出るの早くね!?」
「は、恥ずかしいから、そうゆうのやめてよ…」
「あぁ、わりぃ、つい…」
「さ、寝よっか。」