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あなたの好きをまだ知らない。

第4章 夏晴


何も髪を染めたり、バイクに乗るなんてそうゆう事では無い。ただ単に勉強の成績は落ち、授業も全く聞こえない。

「そんな事してたら、いつの間にか両親は金を置いて出ていっちまった。
まぁニュースにも取り上げられてたしな…仕方がなかったんだ。」

夜空に大きな月が煌々と光始めると、美寿子が精一杯泣くのを我慢しているのが分かった。

「泣くなよ…俺だって…我慢してんだから。」

「でもっ…が、まん…したいの、に…」

「いいよ…やっぱり泣け…」

暗いのを良いことに、俺は美寿子を俺の胸に埋めた。
温かい涙が胸に染みてくる。

「ひっく…ごめんね…泣いちゃって。
何で私が泣いてるんだろうね。冴杜の方が辛いはずなのに。」
「それだけ美寿子が優しいんだよ。さて、そろそろ弱音も言ってられないし、帰るわ。」

そう言って、立とうとしたが、制服が何かに引っ張られた。
それは美寿子の手だった。

「今日は…一緒に…いて?」

そんな寂しそうな顔をされて帰れる訳がない。

「…お母さんは?」

「一回仕事で夜に出ると明日の昼間で帰ってこない…」

「じゃあ…泊まらせて貰うな。」

と腹が鳴った。

「あ、ご飯食べてなかったね。」

「だな。じゃあ一緒に作るか。」

それからご飯を食べた。
何時も一人だった俺にそれはねとても嬉しかった。

「美味い…これ…美味いなぁ…」

何も変わりゃしない、普通のカレーだ。
でも、ホントに分かってくれる人がすぐ傍にいてくれて、こんなに幸せなことはなかった。

それをきっかけに俺はボロボロと泣き出した。
涙は枯れたはずだったのに、止めどなく溢れ出た。

「冴杜…泣いて良いよ。
辛かったよね…」

美寿子に頭を机越しに撫でられる。
とても恥ずかしいはずなのに、何だか安心する。

「ぐすっ…わりぃ…」

「大丈夫、さっき泣かせてくれたから。」

その内、感情の昂りも収まり、二人でゆっくり晩飯を食べた。
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