第4章 夏晴
それからしばらくして、私は冴杜に自分の過去を話そうと決意した。
「…冴杜、今ここで、話しておきたい。」
「…分かった…そしたら、俺も話すよ。」
少しの間は覚悟を決めたのだろうと思った。
2年前だ。
私はバスケ部部長であり、エースだった。
だけど、いつの間にか私は身の回りに敵を作りすぎていたようで
バスケのプレイスタイルすら孤立していった。
それを見越してか、
退部と同時に、部員と私の関係は劣悪になっていった。
「それで…それからは地獄の日々だった。」
後はお決まりのいじめられっ娘ルートだった。
「それで、それで…」
「…美寿子、」
辛かった。
涙もボロボロ落ちていった。
思い出すだけで吐き気のような嫌悪感が胸に込み上げてきた。でも、私は話すのを止めることはなかった。
「それから、私は人を信じたくなくなった。
誰もいない西光高校を選んで、でも、やっぱり人の温かさは忘れられなかったんだね。」
「美寿子、もう分かったよ。
辛い思いはもうしないでいいんだよ。」
「うん…」
いつの間にか外は真っ暗でテラスで話していた私達は手を繋いでいるからお互いを分かっているような状況だった。
「じゃあ、今度は俺だな…」
「別に良いのに…」
「美寿子が良くても俺は嫌だ。だから…」
冴杜の話は私が予想していた、いや、予想などしても意味はなかったが、それの何十倍も酷いものだった。
「俺には、中2の頃に彼女がいたんだ。
付き合って1年を過ぎた頃かな…彼女は突然、学校を辞めるって言い出したんだ。」
.......
彼女の名前は坂口由理
小学生の頃からいつも一緒だった。
でも、中1の時に彼女からの告白で俺達は付き合っていた。
毎日が楽しくて仕方がなかった。
「でも、そんな日常は意図も簡単に潰えたんだ。
そう言われてから、俺達は自然に仲が悪くなっていった。
でも、事件はそれからすぐに起こった。」