第2章 水無月の五日/文月の八日
部屋へ足を踏み入れると、相も変わらず、部屋には物が散乱している。少女曰く「コレでも片付いている!」らしい。
漫画・ゲーム機・学校の教科書、あらゆる少女にとって必要な物が、少女の机の周り、机の上に置かれている。
その中には、歴史改変の修正に対しての報告書の書類も無残に置かれていた。
「お前な……少しは部屋を片付けろよ!国広や膝丸が怒るよ。」
「片付いてるって!コレでも。」
「全部、捨てられても良いんなら別に何も言わないよ。それよか、助けないよ。」
「何、母さんみたいな事やろうとしてるの!?うわ、嫌だ。」
(お前の母親、そんな事やった事あるのか。それよりも、そんな事になっても、片付けないのかよ、コイツ。)
と、疲れが見える表情で溜息を吐いた。
まあ、確かに、前よりは片付いている。少しだけ、ほんの少しだけ。
少女の部屋での自分のいつもの場所に、腰を下ろす。その際に、自分を何もない空間から出し、左隣に置く。
「で?俺に用って、何?」
「あ、ちゃんと伝言がいってたか。良かった~。」
「でなきゃ、お前の所には来ないだろ?ちゃんと安定から言伝貰いました。」
「ですよね~。でも、それがなくとも君はウチの所に来るじゃん。」
「お前がちゃんと、やるべき事しているか見張りだよ。」
うっわひど!?と言いながら、少女は体を起こして、加州と向き合う様に座る。
半分は本当で、半分は言い訳だ。
彼女は追い込まれないと、しないといけない事をやろうとしない。幾ら、余裕があったとしても。だから、見張って早く終わらせようとしている。
言い訳としては、彼女の近くにいるのが心地がいいから。よく、何かを見て大声で笑ったり、燥いだり、騒ぐ等煩い人間ではあるが、何故か心地が良いのだ。だから、少しでも近くに居たいと思う。
刀であるからというのもあるのかもしれない。
「んで、加州に用っていうのはねーー、」
★★★
加州は、少女の部屋を後にして黙って、自分に割り当てられた部屋へと戻った。
パタンと、閉まる音がするのと同時に障子で背中を滑らす様に、腰を下ろした。
「何で……今日に限って……。」
今日だけは、少女の隣に居たかった。いつも何かしら大体は隣にいるが、今日だけはこの日だけは、近くに居たかった。
『今日は、近侍を変えてもいいかな?』