第8章 Last Episode
~佳代side~
新幹線に乗り込み、ふと時計を見た。
時刻は16時50分だった。
他の家族は皆飛行機で新しい街へ向かった。
でも、私だけわがままを言って新幹線に乗った。
だって、発車のぎりぎりまで待てるから。
心のどこかで期待していた。
和ちゃんが見送りに来てくれるんじゃないかって
ひたすらにホームの人ごみの中に
和ちゃんの姿を探した。
でも、やっぱりいつまで経っても
彼は現れなかった。
"17時発 発車致します。 閉まるドアにご注意ください"
アナウンスが入り一斉にドアが閉まった。
その時、
見慣れた後ろ姿が私の座っている座席の窓の隣を通った。
『和ちゃん!!!』
思わず声を上げた。
周りの人がぎょっと私を見た。
そうだ、ここから聞こえるはずがないんだ。
でも、そう叫んだ瞬間…
和ちゃんがこっちを見た。
"発車します。"
そのアナウンスと共に列車が動きだす。
和ちゃんが必死に追いかけてくる。
私は必死に外に向かって叫んだ。
周りの目なんて気にしなかった。
「和ちゃん!和ちゃん!大好きだよ!あの日の約束!忘れてないから!待ってるから!」
和ちゃんも何か私の方に向かって叫んでいるようだった。
でも聞こえなかった。
次第に列車は加速していき、
和ちゃんの姿は見えなくなった。
私は列車の中で
大泣きした。