第5章 中~僕編~
それから数日たったある日、
昼休み、真ちゃんはいつものように屋上に向かおうとしていた。
「おい、緑間!すまん!ちょっと手伝ってくれんか?」
生徒会担当の先生が教室にやってきて真ちゃんに話しかけた。
「…わかりました。」
真ちゃんは少し考えて、それからそう返事をした。
そして俺の方へ寄って来た。
「すまない。今から委員会の仕事に行かなければいけなくなった。今日は行けないと佳代に伝えてほしいのだよ。」
「…わかった。委員会がんばれよ!」
「あぁ、ありがとう」
少し嫌だったが、仕方ない。
そう思って俺は屋上に向かった。
久々に向かう屋上への階段は
なんだか長く憂鬱に感じた。
屋上のドアを開けた。
冷たいひんやりとした風が流れ込んできた。
目の前には真ちゃんかと期待したのか
少し嬉しそうな顔をした佳代がいた。
「よう。」
「…高尾くん」
でも俺だとわかるとすぐに表情が曇った。
「真ちゃんなら、今日来ないぜ。急に委員会入ったとかで生徒会室にいる。じゃ!ちゃんと俺は伝えたからな。」
そういうと俺はすぐに佳代に背を向け戻ろうとした。
「あ…和ちゃんっ!」
その懐かしい呼び方に胸がキュっとなった。
「あ?なんだよ?」
少し声がうわずってしまった。
でも平然を装って返事をした。
「あの…少し話さない…かなって…。」
その言葉に胸がドキドキして
それと同時に数日前のキスマークを思いだしてしまい、イラっとした。
俺には関係ないってわかっているのに
どうしても止められなくなっていた。