第4章 上~僕編~
佳代は頭を横に振った。
一瞬思考が止まった。
でも、すぐに嘘だと思い、再び行為を続けた。
「…っ!ウソばっか言ってんじゃねぇよ。」
俺はそう言って佳代を睨みつけた。
「嘘…じゃない…よ…っあ…ん…本っ…当だよ」
涙目で佳代は訴えかけてきた。
完全に頭の中が真っ白になった。
それと同時に自分が何をやってしまったのか
一気に現実に引き戻された。
「和…ちゃん?」
佳代が俺の名前を呼んではっとした。
「まだ、真ちゃんとなんもしてねぇのかよ?」
「うん…?この間初めて手ぇ繋いだ。」
その言葉を聞いて一気に血の気が引いた。
あぁ、俺は佳代も真ちゃんも
裏切ってしまった…。
「…っはは…。まじかよ。お前ら小学生かよ…」
むなしい空笑いをした後、
俺は佳代を押さえつけていた手をどけた。
「おい。これに懲りたらもう二度と他の男に簡単について行くんじゃねぇぞ。」
俺は立ち上がり服を調えた。
「あ、勘違いすんなよ?お前が"真ちゃんのもの"だからちょっと手ぇ出してみたくなっただけだ。お前と俺はもう…昔の仲良しな幼馴染じゃねぇんだよ。男と女なんだよ。わかったか。…昔とは違うんだよな。」
嘘をついた。
佳代にも
そして
自分自身にも。
そう言い聞かせて納得させたつもりだった。
俺は佳代を置いて部屋を出た。
ふと外を見ると
先程まで降っていなかった雨が降っていた。
そういえば、佳代、傘持ってなかったな。
そう思って、今更お節介かもしれないが
家にあったビニール傘と適当に書いたメモを
佳代の靴の隣に置いた。
しばらくすると佳代の降りてくる音がしたので
とっさに隠れた。
佳代は傘とメモを見るなり
大きな声で泣き出した。
その姿を見ていると胸が痛んだ。
そして佳代は傘もメモも置いて
家から飛び出していった。