第4章 上~僕編~
追いかけたかった。
抱きしめて謝りたかった。
取り返しのつかない
最低な事をしてしまった。
己のふがいなさに
涙が止まらなかった。
時間よ戻れと強く願っても
時間は戻らなくて
残酷に時を刻み続けた。
俺は雨の中傘もささず走りだした。
泣いてることがばれないように
ひたすらに走った。
そしてたどりついた誰もいない公園で
一人泣いた。
ふと雨が身体に当たらなくなった。
誰かが傘に入れてくれている。
そして頭にタオルを掛けてくれた。
俺は顔を上げた。
そこには…
「こんな雨の中こんな所で何しているのだよ。風邪引くぞ。高尾」
真ちゃんが居た。
「真ちゃんこそ…何やってんだよ。」
「今学校が終わって帰っていた所なのだよ。偶然公園で傘もささずに座っている奴が居たので見に行ったらお前だったのだよ。」
「ははは…すっげぇ偶然だな。」
俺はうつむきながら力なく笑った。
「…佳代と何かあったのか?」
佳代の名前に胸がビクンと跳ね上がった。
「…どうだろうな。」
俺は思わず適当な返事をしてしまった。
「そうか…。ほら、さっさと帰るのだよ。風邪を引くのだよ。」
真ちゃんはそれ以上何も聞かず、俺の腕をひっぱり起こした。
「何も聞かないのか?」
「本人が聞かれたくない事をわざわざ聞くつもりはないのだよ。」
そう言って真ちゃんは俺をひっぱりながら無言で俺の家の方面へ歩きだした。
俺を傘に入れすぎて真ちゃんはどんどん濡れて行った。
その真ちゃんの優しさが
今はどうしようもなく苦しくて
ずっと涙が止まらなかった。
俺はやっぱり
緑間真太郎には
勝てない。
そう思った。