第3章 下~君編~
真太郎が居た。
この寒い日にコートも着ないで。
緑色の傘を差して立っていた。
「…真太郎!!」
私は息切れ切れのまま真太郎に駆け寄った。
「全く…すごく待ったのだよ。」
「でも、絶対来てくれると信じていたのだよ。」
そう言って真太郎は静かに笑った。
そして私の頬に優しく触れた手は凍ったように冷たかった。
「ごめん、ごめんね。」
私は真太郎の手を握って精一杯暖めた。
「会いたかったのだよ。」
真太郎は持っていた傘を離し、私を強く抱きしめた。
「ごめんね。」
私も泣きながら抱きしめ返した。
そうして、真太郎は私を離して
目を見つめて言った。
「今日は大事な話があるのだよ。一緒に来てほしいのだよ。」
「うん。」
そうして、真太郎は私の手を引いて歩き出した。