第2章 ひとつめ『嘘が下手な所』
「その格好の異性には付いて行かない様にしてるから」
「え、どういうこと? 着替えたら良いってことだったら一緒に買い物とかいこーよ。任せるしさあ」
よくわからなかったらしく、一瞬困惑したように着衣を気にしていた。
でも、この反応ってつまりは……
「"変化って"くれる気があるの?」
視えるソレが大きくて、被毛が豊かで、真っ白な身体が神々しいので私はもう正常な判断は出来ていないかもしれない。
ああ、どうしてこうも神獣の類は皆揃いも揃って真っ白で美しい被毛に包まれているのだろう。
触れられた獣たちは皆軟らかくてサラサラで、多少迷惑そうにする事は在っても大抵撫でる事を許してくれる優しい者ばかりだったと記憶している。
既に私の脳内ではモフモフした感触を手に想像させ、更には私の目にはほとんど獣姿の白澤として映っている。
ここで脳内を覗き見られれば、私がどうしようもない動物好きだと誰の目にも疑いようのない事実として理解される事であろう。
何が好きとか何処が好きとかそんなちゃちなレベルをとうに超えてしまっているのだ。
白澤はすぐに期待に満ちた満面の笑みを浮かべて両手を私に向かって大きく広げた。
「もっちろん! そんなのお安い御用だよ、どんなのがいいのかな?」
ウキウキとしている所、悪いが、現実も私の想像と同じようにしてあげようと白澤の胸元にスルリと掌を撫で付けた。
そのまま自分の身体も摺り寄せ、熱っぽく囁く。
「そうだね…… 白澤さんらしい格好だったら好き、かも」
「え?」
私はこれから起きる素晴らしい現象に想いを馳せて頬を染め、白澤は私の突然な大胆行動に頬を染めた。
だがそんなこともほんの一瞬で、人通りなどすっかり無視して通りの一部を真っ白な煙で覆ってしまった。
その煙は白澤から発しており、ボフンと勢いよく立ち上がったのだった。