第6章 いつつめ
時々後ろを振り返るとペタペタと草履の音を幽かに鳴らしながら着いて歩いて来てくれていた。
振り返る度に必ず彼が居るので私はなんだかまた嬉しくて何度も振り返る。
「ちゃんと前を向きなさい。転びますよ」
なんて言われながら子供みたいにはしゃいでしまうのだった。
部屋に戻り、私は先に布団に潜り込む。
2人で寝るには多少狭い寝台で照明のスイッチに手をかける鬼灯を待つ。
「さてと。そろそろ電気消しますよ」
「はーい」
布団を口元まで上げて返事をした。
―パチン
部屋を照らす光が消えて闇の中に放り出される。
移動してこちらへと来る鬼灯の気配を感じ取る。
― ギッ……
寝台へと腰を掛けた音がしたので、掛け布団を上げて迎える。
鬼灯の手が私の手に当たり、布団を自分で捲って足を差し入れる様子を気配や当たる肌の感覚で理解する。
けれど、鬼灯は何故かあっちを向いて寝転がってしまった。
暫し黙っていたのだが、本当に寝てしまわれると困るので背中にぺったり寄り添いながら声をかけてみる。
「……ねえ。」
「……はい。」
一呼吸置いて返事が返ってきた。
「……相手してくれるんじゃなかったっけ」
「してるじゃないですか」
「いやいや、違うでしょ」
上にある肩を強くゆすって抗議する。
私が求めているのはもっとアダルティで甘い夜の熱気なのである。
ギシリ。と寝台を軋ませて向かい合うように転がった。
闇に目が慣れてうっすら顔が見える。
照れくさいので顔を伏せたい気持ちと、期待する気持ちから上目遣い気味に見詰めた。
「寝るまで話相手になりますよ」
「いつもと変わらないじゃん」
不満いっぱいに頬を膨らませて視線を2里の間に出来た隙間へと落とす。
「どうして欲しいんですか?」
布団の中から上がって来たその手が私のまだ少し湿った髪の毛を弄ぶ。
「……んううう」
心地良い感覚と、ストレートに言うなんて羞恥でうなり声しか出ない。
くすぐったい。