第5章 よっつめ『自分について来られる所(酒)』(中編)
「そろそろ寝ないと明日キツくなりますよ」
空き缶と空き瓶、燃えるごみを分担してビニール袋に詰めて縛り付ける。
すぐにいくつかのゴミの袋が出来上がる。
「鬼灯は休みなんだっけ?」
「休みじゃなかったらこんな時間まで付き合いませんよ」
当たり前といわんばかりの即答でクスリと笑ってしまう。
彼との軽快なこのやり取りがとても好きなのだ。
「そりゃそうだ。でも鬼灯が休みだったら私も別に用はないし」
普段から特別仕事などには向いていないので手伝い程度しかしていなかった。
書類整理や伝達などの簡単な作業に加え、亡者への案内や忠告、多少の呵責くらいしかすることがない。
これらは他の鬼達がやることで、私はその仕事を分けてもらって暇を潰しているようなものだ。
「お疲れさん、助かったよ。」なんて一言言われるだけで仕事を取ってしまって申し訳ないような、巧くできたんだと嬉しくて仕方ないような、褒められて気恥ずかしいような気持ちでいつもニヤリと笑ってしまう。
ゴミを出す時の為に纏めていると背後から声をかけられた。
「ほら、なんでもいいから湯浴みに行きますよ」
すっかりお風呂の用意をしており、2人分の桶を手に私を急かす。
「んん~」
汚れたままの着物で寝台へと倒れるように逃げ込んだ。
このまま2人で寝てしまいたかったのだ。
それを許さず、桶を2つとも寝台の横に置いて仰向けに倒れた私を鬼灯が抱き起こす。
ダラリと力を抜いているので巧く起こしきれず、ボフンと再度寝台へと倒れる。
「こら。面倒臭がらないでちゃきちゃき動く。貴女ザルなんですから、酔ったフリしない」
「鬼灯が冷たい……そこは『仕方ないですねえ』とかなんとか言ってなだれ込む所じゃないの?」
仁王立ちする鬼灯をジトリと恨めしく睨んだ。
「酒臭いんですよ」
「お互い様だもん」
起こして欲しくて手を差し出したのだが、無常にも扉へと移動してガチャリと開けた。
「わかってるんだったら早くしなさい。置いて行きますよ」
「待って待って」
置いていかれるのではと不安に駆られて飛び起きた。
寝台には私の分の桶があり、中には石鹸など一通りの準備が整っていた。