第5章 よっつめ『自分について来られる所(酒)』(中編)
― コツンっ
2人は部屋で満たされたグラスを合わせた。
「それでは、ドキッ!2人だけの二次会に乾杯~」
「はいはい」
ぐいーっと勢いよく私が煽るのに対し、鬼灯はちびちびと少量を味わうタイプである。
私がちゃんぽんして色々なお酒の味を楽しむのに対し、鬼灯は好きな酒をひたすら飲み続けるタイプである。
ふと思い出し、ビニール袋の1つを手繰り寄せる。
「そうだ、和菓子買ったんだけどおつまみにどうかな」
「いただきます」
鬼灯が身を乗り出して私が漁る袋を覗き込んでいるのを気配で感じる。
「まずは鉄板のお団子からいこうかな」
私は緑色で若草のような香りが食欲をそそる草団子を出した。
日本酒に和菓子が合うと言うのは割とメジャーな話で、この草団子は一口サイズの団子が3つづつ1本の串に刺さっている。
不意にもちもちした表面を鬼灯の唇にぺとりとくっつけてみる。
「……食べていいんですか?」
「自分で食べなよ」
ひょいと串を自分の口に放りこみ、3つとも一気に歯で引き抜き味わった。
鬼灯はやや不服そうにしていたが、自分の草団子を自分で食べ始める。
それらの和菓子類を味わい、日本酒を中心にカクテルなどの瓶をどんどん空けながら時計の針が深夜を指し示す頃までお喋りを楽しんだ。
スマホでチベットスナギツネフォルダを開放したり、白澤(獣)の画像を見せて複雑そうな鬼灯の表情を堪能したりと楽しく過ごしが、液晶に映った時刻を見て残った少量の酒を飲みきった鬼灯が机の上を片付け始める。
「もうこんな時間ですね」
「お腹いっぱいで苦しいね」
私は自分のお腹をさすり、天を仰いだ。