第5章 よっつめ『自分について来られる所(酒)』(中編)
着乱れた着物を軽く整えて部屋を後にすると鍵をかけながら少し声を落として優しく声を出す。
「今夜は夜が明けるまで相手してあげますよ。普段あまり構ってやれませんからね」
「えっ!本当!?」
てっきりお預けかと思ったが、思わぬご褒美に大きな声が出てしまった。
シーッと指を唇に当て窘められたのでとっさに掌で口を覆う。
「本当です。折角ですし、こんな酒臭いままじゃいけないと思いまして」
「うんうん!ちょ、もうちょっと待って!」
思ったよりこの鬼はロマンチックなのではないだろうかとテンションが上がって小声で騒ぎ、勢いよく高速でうなづいた。
このテンションの上がりついでに鬼灯の手元から鍵を奪うように受け取り、部屋へと急いでこんな時の為に買っておいた品物を取りに戻った。
「……」
「お待たせっ、行こう行こう」
桶に小袋を入れ、鬼灯の元へと駆け戻った。
鍵を鬼灯に渡すとそれを受け取り、袖へとしまう。
「何を持ってきたんですか?」
「えへへ、ナイショ」
桶を隠すように身を捻り、悪戯っぽく笑う。
「まあいいですけど。」
気にはなるがネムの性格を鑑みるにその内わかる事であろうと判断し歩き始める。
2人は寄り添い、深夜の道を歩いて浴場へと向かった。