第5章 よっつめ『自分について来られる所(酒)』(中編)
「だから言ったじゃないですか。貴女、いつも私を当てにして歩けなくなるほど飲んだ 演技 を本気でするから困るんですよ」
「へへ、これでも一応酔ってるんだけどね」
私はいつも長引く飲み会にウンザリしている鬼灯の為と言う訳ではないけれど、酔ったフリをしてよく宴会を適当に切り上げていた。
元々、回るのは早くて顔は頬を染めたように赤くなるのだがどうも本気で酔い切ることが難しい体質らしい。
多少の不便さはあるが、酔いどれ共と大騒ぎするあの空間や時間を楽しんでいるのであって、あの場所に限れば酒には特別な興味は無い。
それ以外で言うならば、酒はあるだけ飲みたいのだけれどもね。
鬼灯の腕に絡みついたまま、繁華街をゆっくり歩いて帰路を目指していた。
けれど少し飲み足りず、焼き怪鳥屋や居酒屋をチラチラと視線で追ってしまう。
それに気付いたようで鬼灯が気を利かせて声をかけてくれた。
「もう一軒行きますか?」
いくらかの思順の後、ぎゅっと腕にしがみついて引っ張った。
突然引かれた事により鬼灯の足取りがヨロついたが、毎日わらじであの岩々を軽快な足取りで歩き回っているだけあったようだ。
全く足を絡ませる事も無く速まる足に容易について行く。
声を弾ませて私は提案した。
「宅飲みにしようよ、帰るの面倒臭くなっちゃうし」
「そうですね。」
早まった足に合わせてスピードを上げてくれる。
私達は近くにあった24時間営業の店に入り、酒やらつまみの類を吟味して両手いっぱいに購入した。
鬼灯の怪力は皆様ご存知であろう、その怪力を利用した飲料系買い込み術である。
自室へと到着し、ガシャガシャと瓶や缶を部屋の隅に置いてとりあえず酒とグラス2個を用意し、小さい机を引っ張り出して向かい合って座った。