第4章 みっつめ『楽しそうに歌う所』(前編)
そんないつものSMなやりとりなどには興味が湧かず、曲目録をパラパラをめくった。
すると先日、蓬に借りた漫画ですっかりハマったチャイニーズエンジェルの主題歌が目に留まった。
私は目録を手に、烏頭と並んで座っていた蓬の元へと駆け寄った。
「ねえ、蓬これ一緒に歌おうよ!Yes!チャイニーズエンジェル★入ってるよ」
「本当だ!いいよ 歌おう」
蓬は快諾した
「折角だからもう1人ほしいな」
チャイニーズエンジェルは朱色、群青、うぐいすの3人がメインなのだ。
それを意識してトリオで歌ったほうが楽しいだろうと言う配慮からの提案であった。
隣の烏頭を見るが、興味すらないようで他の鬼と歓談を始めていた。
少し考えながら周囲を見渡していると、シロが目に入る。
彼は色々な歌を知っているのでもしやと声をかけることにした。
「シロとか歌えないかな? シーロー?」
「な~に~?」
少し席が後ろに離れていたので、名前を呼びながらこちらへとシロを呼んだ。
呼び寄せるとふさふさふわふわの毛並みにドキドキと胸が高鳴る。
「きたよ」と目の前にちょこんと座って尻尾をゆるく振るシロを無意識に撫でながら誘う。
「シロ。チャイニーズエンジェル歌える? Yes!チャイニーズエンジェールって入るやつなんだけど」
「歌えるよ~、大好きな家族のため 冷たくないよこの街は~」
事も無げに少し歌った途端に蓬の中の何かのスイッチが入り、続きを一緒に歌いだす。
「平和な世界は 今!すぐ!そこっ」
このまま続きを此処で歌ってしまわれたら勿体無いじゃないか。
曲目録を手にしたまま、機械へと入力する。
「はいはい、入れてから歌おうね~」
― ピッピッピ ピピッ
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