第2章 ひとつめ『嘘が下手な所』
「やっほー、鬼灯」
伸ばした手を鬼灯は掴んでくれる。
そのやり取りに混乱している様子で白澤は2人を交互に見た。
「え、なにネムちゃんこいつと知り合い?」
「何を寝ぼけてるんですか、この間男が」
鬼灯は侮蔑の視線を白澤へ向けたまま、私を引き寄せてその胸に抱き止めて乱れた着物を調えてくれる。
混乱した白澤は怯えているのかすっかり青ざめた顔で防御体制をとっていた。
「え? え?」
「彼女は私の嫁ですよ」
「はあ!?」
「嫁でーす」
綺麗に整えてもらった私はサイドテーブルに置いてある紙袋を手にした。
鬼灯の方は白澤へとジリジリ間合いを詰めている。
「嘘だろ、ちょ、知らなかったんだって! ほんと! やめっ」
「問答無用!!」
「ぼへあっッ」
― ドゴォッ
金棒で一突きされ、壁に穴を開けて後ろに倒れこんでいた。
コツンとその壊れた壁の欠片が私の帯に当たった。
「危ないよ」
「危ないのは貴女ですよ。ホイホイ知らない奴について行くのはやめなさい」
「いやあ、モフモフしてて可愛かったからつい」
申し訳ない照れくささで鼻をかいて笑った。
そんな私に鬼灯は近付き、頭を撫でてくれる。
顔を上げると目が合い、離せなくなった。