第11章 月のゆりかご/上杉謙信(謙信side)
訳がわからない__
そんな不安そうな顔して佐助やら幸村の言葉に耳を傾けている愛香
「あの……この事を信長様は……?」
「それは心配ない!……と、思う……
俺がガマンをすれば万事上手く行く筈!……だ」
「幸村がおとなしく信長の寵愛とやらを受けていれば問題なかろう」
しかし、あの信長にそんな趣味があったとは
笑えるな
「誰のせいでこうなったのか分かってますか?!……まったくっ……」
恨めしそうに俺を睨んでくる幸村に何の感情も沸いてはこない。
まあ、幸村のケツ1つで戦にならないのだから、別に構わないだろう。
ブツブツと文句を言いながら
部屋を出ていく幸村と佐助を見送って、一口
酒を煽る。
愛香に視線を移すと黙ったまま、俺を見ていた。
「黙りこくって何を考えている?」
「何故、私に逢いたいと思ったんですか?」
「愛香の間抜けな顔が見たくなった」
「間抜けって……」
哀しげに睫毛を揺らす愛香を見ていると
何故だか胸がつまる。
「わからん……」
「え?」
無意識に愛香の頬に触れてしまった。
ただの暇つぶしに愛香に会いたいと思っただけなのだが?
こやつの哀しげな顔を見るのは好かん。
「笑え……」
「え?」
「お前の間抜けな笑顔が見たい」
「では謙信様も笑ってください」
「この俺が__か?」
笑みなどとうの昔に忘れた。
あの女を失ってから__