第10章 月の揺りかご/上杉謙信(夢主side)
「黙りこくって何を考えている?」
「何故、私に逢いたいと思ったんですか?」
「愛香の間抜けな顔が見たくなった」
「間抜けって……」
期待していた答えとちょっと違うんだけど
なんだか涙がでそうになる。
「わからん……」
「え?」
謙信様の冷たい手が私の頬に触れ、視線が絡み合う
「__俺はお前のそのような顔はみたくない」
どうして?
そんなにも辛い顔をするの?
思ってはいけないんだけど、ちょっとだけ
期待してしまう
「笑え……」
「え?」
「お前の間抜けな笑顔が見たい」
そう呟く謙信様を見ているだけで胸が苦しくなってしまう。
だって、瞳の奥が寂しげに揺れているんですもの。
「では謙信様も笑ってください」
「この俺が__か?」
自嘲気味に笑みを作る謙信様を見ているだけで切なくなる
まるで幸せな笑みを拒否しているかのよう。自分は幸せになる権利を持ってはいけないと思っているみたいで胸が苦しい
「笑って……」
頬に添えられた手を重ね、微笑みかけると
「ふっ……」
少しだけ表情を和らげてくれる
なんて刹那的な笑みをするの?