第10章 月の揺りかご/上杉謙信(夢主side)
何故だか自分でも分からない
一筋の涙が頬を伝っていく
「何故、泣く?」
「わかりません……」
余計な心配をかけないように笑みを作ってみるけど
胸がとても苦しい。
認めたくない想いを必死になって止めようとするんだけど__
「泣くな……」
「っ……」
流れ落ちた涙の跡を拭うかのように謙信様の舌が触れる。
だんだんと触れられた場所が熱を帯びてくる。
「お前は不思議な女だ」
「え?」
「俺の心をかき乱す」
「あっ……」
ゆっくりと押し倒されてしまい、身体が硬直してくる
そのくせ心臓はうるさいくらいにドキドキとしてしまう
何も言わず黙って私を見据えている瞳は
光りを宿してはいない
「この手を振りほどかなくていいのか?」
指を絡ませ床へと押し付けられている。
ぎゅっと握りしめられて痛いのに
振りほどく事が出来ない
振りほどくという事は、謙信様を拒否しているように思えてならないから
だから、私はその手を振りほどかない
謙信様の事をもっと知りたいと思う
触れ合えば少しは分かるような気がするから
もっと謙信様の事を知りたいと思う気持ちが
溢れてとまらない
好きになってはいけない__
頭ではわかっているのに
心がついていかないの