第8章 「さん」付けの代償/徳川家康(家康side)
「はぁー……」
静かな部屋には愛香の嗚咽と鼻水をすする音
そして、俺のため息
「何で泣いてるの?」
「ふっ……んぐっ……だっ……て、き……きらわれっ……んぐっ……」
ん?
嫌う?
「ごめ……んっ……ひっく……きらっ……きらわないっ……でっ……」
「……愛香」
泣いている理由がよく分からなかったけど
やっと分かった気がした。
俺に嫌われたと思って泣いていたんだ。
あんなことくらいで嫌いになるわけないでしょ
まったく、可愛すぎる。
無性に愛香に触れたくなる
この気持ちを抑える事なんてできやしない。
(抑える気もないけどさ)
頬に触れ、顔をあげさせると
涙に潤んだ瞳が俺の心を鷲掴みしているみたいだ
愛おしくて、でも……
素直に言葉に出来ない俺は
「バカじゃないの?」
「ふえっ?」
「俺があれくらいで愛香を嫌うわけないでしょ」
「ふぁーんっ……ごめんなさいっ……」
「……謝らなくてもいいけど」
「?」
「__怒ってるよ」
「え?」
「……俺以外の男に簡単に触れさせて」
「……っ」
俺から離れようとするから力を込めて離さない
決して逃がさないよ
「わかってる?」
「……うん」
「……分かってない。愛香に触れていいのは俺だけ……」
言葉でいっても天然な愛香には伝わらないよね?
だったら__
手段はひとつ__