第8章 「さん」付けの代償/徳川家康(家康side)
はあー……まったく……
これ以上みっともない俺を晒したくないから
愛香から離れようとしているのに
なんで追いかけてくるんだよ
「家康っ! 待ってよ!!」
「ねえってば!!」
大きな声で俺の名前は呼ぶし
「家康っ!! ねえ!!
家康!!……っ」
「……大きな声で呼ばないでくれる?」
「……っ……家康っ」
立ち止まって、振り返ると
涙ぐみながらも安堵の微笑みを浮かべている
「……面倒くさい」
つい口から洩れてしまう言葉
これは俺自身に向けていった言葉だ。
苛ついて愛香から離れようとしたくせに、追いかけてきてくれた事が嬉しいと思う
挙げ句の果てに涙ぐむ愛香が可愛いくて仕方がないなんて
(俺の事を想って泣く愛香が、こんなにも可愛いなんて思わなかった)
ただ__
自分自身に対して呟いた言葉を愛香が勘違いして泣いているのは……困る
正直、どう慰めていいのか分からないからだ。
「はあー……泣かないでくれる?」
「……っ」
こんなにも可愛い愛香を他の男に見られたくなくて近くの部屋に連れ込んでしまった。