第7章 「さん」付けの代償/徳川家康(夢主side)
静かな部屋に響き渡る嗚咽と鼻水をすする音
何度めかのため息を吐いたあと、家康が静かに口を開いた。
「何で泣いてるの?」
「ふっ……んぐっ……だっ……て、き……きらわれっ……んぐっ……」
嗚咽が邪魔をして上手く喋れない。
ちゃんと言わなくっちゃと気持ちだけが先走ってしまう。
「ごめ……んっ……ひっく……きらっ……きらわないっ……でっ……」
「……愛香」
家康の掠れた声がしたと思ったら、温かい手が頬に触れた。
そのまま顔を上げさせられて、視線をそらしたかったけど……
「!!」
家康が困ったような顔をして微笑んでいたから、私は視線を外せなくて見つめてしまった。
「……不細工な顔」
酷い言葉を私に投げかけるけど、優しく私の涙を拭ってくれる。
「バカじゃないの?」
「ふえっ?」
「俺があれくらいで愛香を嫌うわけないでしょ」
「っ!」
私の鼻を指で摘まむ家康の顔は、苦笑いをしていて瞬時に気持ちがわからない__
けど、「嫌うわけないでしょ」
その言葉だけで嬉しくて、しがみついくように抱きついてしまった。
「ふぁーんっ……ごめんなさいっ……」
「……謝らなくてもいいけど」
「?」
「__怒ってるよ」
……え?