第7章 「さん」付けの代償/徳川家康(夢主side)
「家康っ! 待ってよ!!」
私の声など聞こえていないようにスタスタと歩いている家康の後を必死で追いかける。
最初はやきもちを妬いてくれて嬉しいと思ってしまったけど
本気で怒っているみたいで
今はとてもイヤ
「ねえってば!!」
声を掛けても知らんぷり
家康の背中がお前なんか知らないと言っているようで涙が溢れてくる
このまま拒否されたらどうしよう……
「家康っ……!」
お願い
足を止めて!!
振り返ってよ
「家康っ!! ねえ!!
家康!!……っ」
「……大きな声で呼ばないでくれる?」
「……っ……家康っ」
やっと止まってくれた
でも、家康の表情は険しくて、涙が溢れてとまらない。
「……面倒くさい」
ポツリと呟く声が私の心をえぐった。
やきもちなんかじゃない
家康という彼氏がいるのに他の男と仲良くした私を軽蔑したんだ……
私、家康に嫌われちゃったんだ
「ふっ……んぐっ……」
自分では止めようがないくらいに涙が出てくる。
「はあー……泣かないでくれる?」
「……っ」
家康の顔を見るのが怖くて顔を上げられない。廊下にポタポタと涙が落ちていく。
「来て」
肩を引き寄せられて、近くの部屋へと連れ込まれてしまった。