第51章 ピックアップ御礼作品【月夜に抱かれて】/秀吉
「もう!マジ最悪なんだけど……!」
部屋に戻ってきた私のイライラは頂点に達していて、その辺にある物を意味もなく投げつけていた
(……まあ、八つ当たりともいうけど)
それでもすっきりとしなくて、布団に転がって目を閉じたけど……
「うわぁー……余計にイラつくわ」
浮かんでくるのはさっきの光景。
綺麗な姫君たちが秀吉を取り囲んでいる──
あからさまに秀吉に媚を売っているのは誰が見てもわかる。それに対して秀吉も笑顔で対応しているのがムカつく。
「くそ秀吉!」
怒りに任せて枕をグーで殴りつけても、ただ痛いだけ……
「もう!秀吉なんか大っ嫌いだからな!」
「そんな悲しい事を言うなよ」
「むっ……!……なんでここに来るんだよ」
「つか!勝手に部屋に入って来るな!」
矢継ぎ早やに秀吉に文句を言っても秀吉は、黙って笑みを浮かべて私の傍に腰をおろした。
「拗ねている愛香は可愛いな」
「っ……!」
垂れ目の秀吉が更に垂れ目になって微笑みかけてくる。
思わず胸がきゅんと甘い痛みを感じてしまい、怒りが一瞬で消え去ってしまうんだけど。
素直じゃない私はそれが物凄く居心地が悪くて秀吉に背中を向けてしまう。
「垂れ目のくせにそんな顔すんなよ」
どきどきしちゃうじゃん。
「本当……お前は可愛いな」
「……!!」
秀吉の優しくて甘い声と一緒に大きな手のひらが、私の頭を慈しむように撫であげていく。
やばい
嬉しくて、恥ずかしい
顔が一気に熱くなるわ。